古雜文庫

図書カード

仲木貞一:屍體の來るまで

表 題 屍體の來るまで
著 者 仲木貞一
底 本 「早稻田文學」第百號(1914年3月1日 早稻田文學社刊)
初 出 同上
更新日 2021/11/01

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番頭。(火鉢の側に坐つて)お一人でお退屈で御座いませう。何しろこんな淋しい所で御座いますから。——然し最う間もなく汽車は着きまして御座いませう。
芳之助。(顏が擧げて、火鉢の上に手をもみながら)然し田舍の汽車だから、幾何か後れるんだらうね?
番頭。後れても十分か廿分位のもので御座います。
芳之助。そして、汽車は今度の切りで、後は無いんだつてね?
番頭。えゝ、今度のが終列車で御座います。何うも、これだけが不便で困ります。(間)こんな山奧に初めて入らしつたのでは、道が惡くつて、嘸お困りで御座いましたらう。それにこの二三日は、この通り降り績きなので、猶更道が非道くなつて居ります。
芳之助。隨分非道い道だね。然し俥にゆられながら、左右を眺めると、大きな山が、雨雲に掩はれて居る景色は、何とも云へん好い景色だつた。今度、こんな事でなく、緩り來た時には、彼地此地を見物して廻はらう。
番頭。えゝ、何卒是非お緩り入らして戴きます。この河上には隨分景色の好い所が澤山に御座います。年々東京からお見えになるお方が、大層多くなりました。お陰で追々と開けて參ります。