古雜文庫

図書カード

中野秀人:赤い縫ひぐるみの鸚鵡

表 題 赤い縫ひぐるみの鸚鵡
著 者 中野秀人
底 本 『我觀』第百四號(1932年7月1日 我觀社刊)
初 出 同上
更新日 2022/02/02

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 赤い縫ひぐるみの鸚鵡が、私の頭のなかで、一つの主題を要求してゐる。
 なぜあの鸚鵡が、私の記憶のなかで何時でも新鮮なのだらう? 何故だらう?
 私どもの住むでゐるこの郊外を貫ぬく一本の街道がある。軒を竝べてゐるのは殆ど商家である。そしてその道の眞中を郊外居住者達のためのバスが往復する。雨が降ると、その街道はバスの重みで押し潰されて、人工的なとてもひどい凸凹を呈する。そしてその上を、バス自身が跳ねたり轉むだりする凹むだところに砂利を投げ込むで修繕する。けれども結局同じことである。私どもは、その道を通路として生活してゐる。
 この道に軒を竝べてゐるところの家は低くて舊い。或はすぐに舊くなつてしまつたのかも知れない。いづれにしても、ある制限まで發達して來て、一先づ休止してゐるやうな感じのする街道である。だから新しく改築されて、生木だの塗立のペンキの色だのを見せてゐるところでも、それは破れた障子に紙の繼を當てゝゐるやうな消極的なもの悲しさを與へる、そして、それは、兎に角機械の一種であるところのバスに威壓されて、道と共に曲つたり、ゆがむだりする。